呼んでも返事をしない子。会話が始まる前に育つ「やりとりの力」の正体

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はるみち

言語聴覚士公認心理師
はるみちです

パパさん

声をかけても返ってこない

ママさん

親から働きかけても一方通行な感じがする

私は現在発達支援事業所に勤務しており、お子さんの言葉やコミュニケーションに関する相談事をよくお受けします。

冒頭にあるご相談も実際に何度もあったもので、“会話が成立しない”“やりとりが続かない”場面が続くと色々な心配が募ってしまいますよね。

私の経験上、こういったケースでは言葉そのものではなく少し別のところで子供さんがつまづいてしまっている事が多くあります。

それは相手と順番を交代しながら関わる力がまだ充分に育っていないこと。専門的には「ターンテイキング」と呼ばれる考え方。

とはいえ、これは

  • 順番を守る
  • 交代でやる

といったルールの話ではありません

イメージは遊具のシーソー

片方が動くと、相手の動きを受けてもう片方が動き・返す。

2人の間をコロコローッと感情や意思が行き来するもの。

一人では成立しない“行ったり来たりが続く関係”の話になります。

実は発語以前から静かに育っていく「ターンテイキング」

この積み重なりのサインに気づけるようになると、子供の“いま”がかなり違って見えるようになってきます。

今回の記事を読むことで、以下のことがわかるようになります

本記事からわかること
  • やりとり・順番交代の力がどのように育つのか
  • 発語の前に育つ“会話の土台”とは
  • 「今日からできる」大人の関わり方・視点
目次

ターンテイキングとはやりとりが循環する力

ターンテイキングという言葉を直訳すると「順番交代」

これだけだと、ただの「遊具の順番を守って使う」というようなイメージになっていまいがち。

言語発達の土台としてのターンテイキングは先ほどお伝えしたシーソーのような考え方です。

子供は常に片側のシーソーに座っている状態を想像します。反対側(他者)との間で行って戻ってくる気持ちなどの循環が生まれていることが肝心です。

ターンテイキングは「気付く👉みる👉受け取る👉返す」の連続

ターンテイキングが成立している時、子供の中ではこんな流れの連鎖が起きています。

  1. 相手のアクションや声に気付く
  2. 見る
  3. ☝️を受け取る
  4. なんらかの形で返す

最後の「返す」は言語である必要はありません

  • 目線
  • 身振り
  • 表情
  • 体の動き など

これらは全部が立派な“ターン(返し)”

この循環が回り始めていれば、発語の準備は静かに進行中です。

「返せない」のではなく「循環が不安定」

「やりとりが続かない」「一方通行になってしまう」

これらは“ターンテイキングができていない”わけではなく

  • 子供のターン(返し)を大人が気づけていない
  • 子供のターン(返し)が限定的
  • 子供側の受け取りに時間がかかっている

といった循環のどこかが弱い状態だと考えられます。

「できてる」/「できてない」の2面だけで見てしまうと、必要以上に不安が煽られてしまう。。

ですが、やりとり循環のどこが今弱いのかな?と考えることができると、見通しが立てやすくなってきます。

“ことば”のやりとりはターン方法の一つとして後から乗っかってくる

ことばは、目線や表情など数あるターン方法の一つです。

  1. 気付く
  2. みる
  3. 受け取る
  4. 返す

上記の流れが先に安定し、流れの上に声やことばが乗ってきます。

遠回りに見えるかもしれませんが、発語を意識する時ほどやりとりの循環に目を向けることが大切になります。

やりとりの循環は「順番通り」には見えない

ターンテイキングをシーソーでイメージすると「大人👉子供👉大人👉子供…」とシンプルな交代が頭に浮かぶと思います。

基本的なイメージはそれでOKですが、ここではもう少しだけ深く掘らせてください。

なぜなら実際の場面ではそんなにキレイに当てはまらないことが多く、特に発語がまだのお子さんの場合、ターンは「じわじわ」っと少しずつ現れてくるからです。

具体例|一つの声かけの中で起きていること

大人が子供に声をかけた時の子供の反応(例)
  • ちらっと大人の顔を見る
  • 一瞬、動きを止める
  • 声に反応して表情が変わる
  • 少し間を空けて、体が動く など

これだけ見ると「どれも返事にはなっていない」ですね。でも、完全な無反応でもありません

つまり、例に挙げたような反応が一つでも見られるなら、やりとりの循環は動き始めていると考えられます。

ターンテイキングは複数の反応の集合体

ターンテイキングは

  1. 気付く
  2. みる
  3. 受け取る
  4. 返す

この小さな反応の集まりとして現れます。

ここで大切なのは、この反応が毎回順番通りに全部出なくて良い。ただ「見た」だけでも良い。

順番が前後することもあれば、全部が出揃うこともある。

このように、反応が重なり合いながら少しずつ「やりとりっぽさ」が積み上がっていきます。

次の章では、実際の場面でやりとりに気づきやすくなるチェックリストについて解説します。

ターンテイキングが育っているサインを拾うチェックリスト

やりとりチェックリストの注意点
  • 何個当てはまってもOK
  • 今日はできたけど、明日消えることもある
  • 1つでも見つかれば、ちゃんと育っている
  • できる/できないの評価リストではない

気付く・注意が向く(やりとりの入り口)

やりとりは他者に気付くところがスタート地点。

チェックリスト
  • 声をかけられると一瞬動きが止まる
  • 名前を呼ばれると視線・姿勢が変わる
  • 大人の声掛けで表情が変わる など

受け取っているサイン

外からは一番見えにくいけど、着実な変化が生まれている時間。

チェックリスト
  • 大人の働きかけに対し間(沈黙)が生じる
  • 大人の働きかけに対しじーっとを見る
  • 同じ刺激に毎回似た反応をする
  • 別の場面で似た反応が出る

言葉のやりとり“前”段階

ことばのやりとりが成立する前に、子供は身体で表現し返してくれるようになります。

チェックリスト
  • 身体の向きを大人(相手)に向ける
  • 距離を縮める/離れる
  • 手足が動く
  • 顔(表情)を大人に向ける
  • 同じリズムで動こうとする 
  • 発声がある         など

感情がアクションに乗る

感情はターンテイキングのエネルギー源

チェックリスト
  • 笑い返す・驚く・嫌な顔など表情の変化
  • 楽しげな場面で反応が出やすくなる
  • 特定の人の方が反応が出やすくなる

繰り返しが生まれる(循環の芽🌱)

ここまでくると、やりとりは「一往復」から「流れ」に。

チェックリスト
  • 同じやりとりを何度も求める
  • 大人の反応がくると、また返そうとする
  • やりとりが終了すると不満そうにする
  • 似た形のやりとりを子供から開始する

ターンテイキングが育つ大人の関わりは、「❌教える」「⭕️循環を守る」こと

パパさん

よっしゃターンテイキングわかった!いざ練習!!

ママさん

早速子供に教えてみよう!

と、もし思ったなら一旦深呼吸しましょう。

ターンテイキングはこれまでにみてきたように「ある日突然できるシロモノ」ではありません。

動きを一瞬止めることや、身体を向けるなどの小さな反応の積み重ねが、やりとりの循環を少しずつ作り上げていくもの。

ここで大人に求められる役割は「正しい返し方を教えることではありません

ここで大人が大切にしたいことは…

  • 子供から出ている反応は途中で遮らない
  • まだ未完成なやりとりを、「続くもの」として扱う
  • 子供と1対1の対面を存分に楽しむ

ここでもう一度、楽しいシーソーを思い浮かべてみましょう。

子供がシーソーを動かしている最中に大人の力が強く働くと、子供はバランスを崩してしまうかもしれません。

相手の重さ・動き・笑顔をしっかり感じながら遊んだ方が、より素敵なシーソーになると筆者は思います。

例え揺れが小さいものだとしても、行ったり来たりが続きそうですね。(もちろん時間が許す限り。無理なく行きましょう)

こうしてターンテイキングは静かに、でも確実に育ってゆきます。

この記事が日々の子育てに悩み、不安を感じているママやパパへの「気づき」や「見通し」の一助になれば幸いです。

次に読むなら

今回のターンテイキングと共に、言語発達の土台を支える仲間たち

著者写真

はるみち(言語聴覚士/公認心理師)

【経歴】MRとして製薬会社に10年勤務し、30歳過ぎでST養成校へ。現在は臨床で言語聴覚士として10年以上の経験を持つ。令和4年に公認心理師を取得。
【専門】小児の言語発達とコミュニケーション支援。

→ 詳しいプロフィールはこちら

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