不注意で衝動性が高い子供、どう接する?

小児言語聴覚士・公認心理師のはるみちです
「じっとしてて」「静かに待ってて」
そんな声掛けを何度しても伝わらない子供に、ついイライラしてしまうことはありませんか?
大切な子供だから、不注意からの事故や怪我の心配も尽きないと思います。そして心配だからこそ、余計に感情的になってしまうこともあるんですよね。
では、衝動的に動いてしまったりすぐに気が散ったりする子供達に対して、大人はどのように関われば良いのでしょうか。
以下に今回の記事のキーワードを挙げています。
- 衝動性が高い
- 不注意
- 待てない
この記事では上記の様な行動の背景と、それにどう向き合えば良いのかを専門的視点からわかりやすく解説しています。
読むことで子供の行動への見方が変わり、日々の関わりが少し楽になるヒントが得られます。
よければ最後までお付き合いください。
それは「わがまま」でなく「発達の特徴」かも
- 衝動的に動いてしまう
- 待てない
- 不注意
上記の様な子供の行動は「しつけが足りない」わけではありません。
理由として発達の特性や未成熟さによるものが多く、叱ることよりもその子にあった関わり方や環境調整の工夫が大切になります。
発達支援では「子供がなぜそのように動いてしまうのか」という背景に目を向け、行動を整えるための“仕組み”や“理解の視点”を重視しています。
高い衝動性や不注意に潜む黒幕とは…?


特に未就学児ごろの子供達は、そもそも「自分の気持ちを抑える」「相手の話に注意を向ける」ことがうまくできません。
これは脳の発達(特に前頭葉)と深く関係していて、「我慢ができない=悪いこと」ではなく、発達の途中段階と捉えることが大切です。
特に衝動性が強い子供には以下の様な特徴があります。
- 頭で「待った方がいい」と思ったとしても体が先に反応して動いてしまう
- 視界に入ったものにすぐ反応してしまう
- 自分の思いのままに行動してしまう
上記の様な特徴に対して



しつけがなってない!



言っても学ばない!
このように大人が捉えてしまうと、大人も子供もどんどん苦しくなっていってしまいます。
わかっちゃいても、イライラする時はイライラしてしまうんですが。。。
ただ、「原因がちゃんとあるんだ」ということを知っているのと知らないのとでは大きな違いがあると思います。
よく見る行動と関わり方


- 活動や話の途中で席を立ってしまう
- 「あとでね」が待てずにその場で何度も要求してくる
- 他の子の遊びに急に割り込んでしまう
- 危ない事でも思わず手が出る・身体が動いてしまう
このような行動にどう関われば良いでしょうか?
見通しが立たない



「アトデ」?待つ?どれぐらい?
「チョット」???
「後で」や「もうちょっと」という表現を大人はよく使いがちです。
「まえ」や「あと」という“時間の概念”を、子供が安定して理解するのは概ね4歳以降と言われます。
そして「少し」や「ちょっと」は、使う人や条件によっては1分にも15分にもなり得る表現です。漠然としていますね。
こうした「よーわからん」が「待てない」に繋がるため、以下のような声掛けの工夫がオススメです。
・具体的な行動で声掛け『お皿が全部キレイになったら遊ぼう』←皿(シンク)見せると尚良し
・視覚情報をプラスする「これ(タイマー)が鳴ったらお買い物いこ」
この工夫は療育の現場だけでなく、普段の子育てでも私はよく使っています。始まりや終わりがはっきりしているぶん、子供にとってもわかりやすい表現になっています。
待つだけでなく、子供の行動の切り替えにも役立つので手軽な必殺技というイメージです。





“タイマー様”は赤いエリアが残り時間を視覚的に教えてくれます。
「赤が減った」=おしまいに近づくを教えてくれます(ありがたや)
視覚刺激に引っ張られる
目に入ってくる情報という刺激は、とっっても強いものです。
その時その時で子供が目にする視覚情報を、大人がコントロールするのは難しいものです。ショッピングモールでおもちゃ屋さんだけ見せないようにはできませんよね。。
逆に言うと、ルールを視覚的に伝えることで子供の理解の助けになります。
・絵(写真)カードなどで、“今”なにする時なのかを伝える
時間の概念の中で「まえ」や「あと」に比べると、「いま」という概念が子供にとって最もわかりやすいものです。
「いま」することを言葉という音の情報だけでなく、目にみえる形で繰り返し示すことが理解や行動の抑制に繋がります。
フィードバックで意欲を育てる


短い時間からで全然いいんです。
- 「いま待てたね!すごい!」
- 「順番守ってくれてありがとう。パパ(ママ)嬉しいな」
このように子供の行動の直後に伝えるようにします。ハグなども添えて。
小さな成功体験の積み重ねが、子供の“やってみよう”を少しずつ育ててくれます。
また、大人が感謝を伝えることで“自分の行動がパパママの役に立った・喜ばれた”という気持ちを子供に与えます。
この気持ちを自己効力感といい、子供の心の成長を促す貴重な栄養源になります。
環境調整
・注意がそれやすい子には、刺激が少ない席(先生に注目しやすい)を選ぶ
・待ち時間には手持ち無沙汰にならないように「待つための遊び」を準備
目に入る刺激量を調整したり、強く集中できるものを準備することも環境調整として有効です。
まとめ
衝動的な行動や注意のそれやすさは、子供や大人にとっても困りごとになる場合が多くあります。
大人がその子の特性を理解し、「この子にはこういう伝え方が伝わるんだな」「こういう環境だと落ち着くんだな」と試行錯誤していくことで少しずつ変化が見えてきます。
無理に我慢させたり頑張らせることは、お互いしんどいわりに、あまり効果的とは言えません。
“今のその子”にあった関わり方をすることが、子供が育つ土台を整えることに繋がります。
その他、実践的な支援については以下の記事も参考にされてみて下さい。


終わりに
「待てない」「何度言っても同じことをする」そんな子供達と向き合う日々は、大人にとっても非常に根気のいるものです。
でも、「できるようにさせる」ことを目指すよりも、「どうすればこの子に伝わるか」「安心して過ごせているか」という視点で関わる方が、案外近道になることもあると思います。
今後はこうしたお子さんへの、より具体的な支援方法についても別記事で紹介していく予定です。
「これは甘やかしなのか?」「どうすれば落ち着くのか?」と悩む方のヒントになれば幸いです。