4歳児のことばの遅れって…例えば?
4歳ごろになってくると、日常の出来事を3語以上の文で伝えたり、お友達や大人と簡単な会話のやりとりを楽しめるお子さんが増えてきます。
けれども、中にはまだ単語が中心だったり、話が途切れ途切れになってしまう子もいます。
- “あのね、あのね”が多くて伝えたい事をまだ上手く話せない
- 3語文が出てきたけど、まだぎこちない。
- 語彙数が少なく、かんしゃくが激しい
このような反応が普段からあると「うちの子、発達が遅れているのかな?」と不安を感じてしまうのは自然なことです。
4歳で言葉が遅れているかな?というケースでは、発達の特徴や環境の影響などさまざまな要因が関わっていることがあります。
また一方で、この時期から言葉が大きく伸びるお子さんも少なくありません。
- 4歳まで単語がちらほらだったけど、5歳になる頃には3語文くらい話すようになった
- 指差し・動作まねくらいだったけど、4歳の間に2語文を話すようになった などなど
私は言語聴覚士として現場の経験をもとに、子供のことばの発達を促す有効なツールとして絵本を推奨しています。言葉の基礎となるやりとりや、聞くちからが育つことで言葉が増える事が多くありました。
絵本は、毎日忙しくて「子供との時間があんまり取れていないなぁ‥」と感じているママ・パパに最適です。
一緒に一冊読むだけで、時間や空間・ことば以上のものを共有できて、愛着形成にも活躍してくれます。
今回の記事を読んでいただくことで以下のことがわかります。
- 言語聴覚士の立場から絵本をオススメする理由
- 4歳児の言葉の発達を促す絵本7つ
- 療育現場や実生活での使用例
先にオススメ絵本タイトルだけ一覧でまとめますので、気になる絵本があればすぐにチェックしてみてくださいね。
絵本がどうして“ことばの発達”にいいの?


絵本が言葉の発達を促す理由は以下です。
- 楽しみながら聴く力が育つ
- やりとりが自然に増え、ことばの土台である“親子の信頼関係”が安定する
- 話したい(気持ちを外に出したい)意欲を引き出してくれる
好きなものを、好きな人(ママ・パパなど)と共有できる時間は、子供の心にたくさんの栄養を与えてくれますよ。
その栄養がことばや社会性が伸びる芽となり、少しずつ子供の発達を助けていってくれるはずです。
特に言葉がゆっくりなお子さんには以下のような特徴の本が向いています。
- 繰り返しが多くリズミカル
- 短いセリフや擬音が多い
次に具体的にどんな絵本がいいか挙げてみましょう。
より詳しく知りたい方はコチラ
4歳の言葉の発達を促すオススメ絵本6選


オススメ絵本1 カラスのパンやさん


- たくさんのパンから「ママはこれが好き!◯ちゃんは?」などやりとりが生まれやすい
- 色、形、大きい小さい、多い少ないなど抽象的な言葉を学ぶことができる
- パンが売れずにションボリ、売れてニコニコと気持ちの概念を学ぶ入口になる
- 「ぶどうのパン」「こねこパン」と、「パン」に関連づけて語彙の拡大を図ることができる



ふだんは座っていられないけど、この本を読むときは大人しく座って聞けている児童さんがいました。そばにいて「集中しているな」というのがわかりやすく伝わってきていました。「バナナのパン…」と、こぼすように言った言葉が印象的でした。
少しずつ3語文(「ママ これみて」など)が出始めた子に特にオススメです。
オススメ絵本2 だるまちゃんとてんぐちゃん


- 相手に憧れて、どんどん天狗化するだるまちゃん。「同じ」「違う」から理解を深めることができる
- 理解(インプット)の積み重ねが表出(アウトプット=発語)につながる
- だるまちゃんの“まねっこ”を通して「姿形・動き・ことば」のまねっこの楽しさを子供が自覚するきっかけになる
- 登場人物同士の会話がシンプルにテンポよく進みます。相手の良い点を次々に注目する注意の選択・切り替えを促せる



「単なるおうむ返し」と子供のことばのまねっこを不安がる親御さんや園の先生も少なくありません。おうむ返しは“自分の言葉として外に出す練習をしている”と捉えると、子供の日々のひたむきさに感動させられます。この絵本でどんどんお子さんにもまねっこしてもらいましょう!
オススメ絵本3 ともだちや


- 他者視点の感情理解について学ぶことができる本。「たのしい」「いや」など自分視点の気持ちを少しでも表現できる子にオススメ
- キツネの気持ちが大きく動きながらストーリが展開します。そのため読み手(親)の声の抑揚がつけやすく、聞き手(子供)に言葉の意味よりも言葉に込められる気持ちの情報がたくさん入る仕組み



この本を読みきかせて、年長の男の子が「気持ちって何?」と言ってくれました。とても大切な気づきだなと感じます。
ママ・パパの言葉でそんなやりとりができると、とても素敵な時間になると思いますよ。
オススメ絵本4 ぐるんぱのようちえん


- 毎度はりきるけど上手くいかずしょんぼりする。気持ちの上げ下げが一定のリズムで表現されていて、心情に寄り添いやすい
- 「作る→買う」「作る→履く」と動作語の関連も一定のリズムで進み、語彙理解の拡大に良い
- キーアイテムがビスケット・車、靴など、身近な生活語彙であるため、文の理解がしやすい



ぐるんぱが失敗するたび「しょんぼり」が増えていきます。読み手も「しょんぼり」しながら読むことで、4歳の子が毎回「しょんぼり」な顔をして聞いてくれます。ただ、最後のシーンでは必ずとびきりの笑顔を見せてくれるので「よかったね」「嬉しいね」と感情と言葉を繋げるラベリングを行なっています。
オススメ絵本5 ノンタンこちょこちょこちょ


- 短い繰り返し文は言葉をキャッチしやすく、発話のハードルを下げてくれる。言葉を出す成功体験が積みやすい
- 呼びかけ→反応→返答といった会話サイクルを遊びの中から自然に学べる
- 体感とことばを繋げる(こちょこちょ-くすぐったい)ことで感覚を言語化するきっかけになる



繰り返しの擬音(こちょこちょこちょ)と繰り返しのパターンで絵本のリズムに乗りやすい一冊です。寝る前の娘に「こちょこちょ→きゃー」で盛り上げっていると、奥さんから怒られる事が多々あったので、日中の読み聞かせが無難かもしれません。
オススメ絵本6 わにわにのおふろ


- 誰もが毎日入るお風呂のお話なので、親密性が高くリアルな場面の想像×絵×音をマッチさせやすい
- 「ゴシゴシ」「じゃー」など擬音語が多数。発語意欲を掻き立てる響きの音が満載
- 口の形がはっきりとした擬音語が多いため、口形と発語の学習がしやすい



言葉を教えるというよりも、「真似してみたい音の体験」が詰める絵本です。要所でジェスチャーを入れやすいし、擬音は大袈裟にわざと多めに言ったりして子供の身体にも触れながら読み進めていけます。絵(視覚)×音(聴覚)×触れる(触覚)と複数の感覚から同時に学んでいけます。
まとめ


4歳児の言葉をサポートするアイテムとして絵本を紹介してきました。
今回紹介してきたラインナップには以下のような特徴があります。
- 擬音やリズムで発語を促すもの
- ストーリーを通して感情や会話を育てるもの
- 想像力を広げ、言葉の表現を豊かにするもの
いずれも言語聴覚士の視点から「4歳で言葉がゆっくりな子に安心してオススメできる本」です。
焦らず、絵本を“親子時間のきっかけ”として取り入れてみましょう。
親子で声を出して笑い合える時間が、きっと少しずつ言葉の力を育ててくれるはずです。


はるみち(言語聴覚士/公認心理師)
【経歴】MRとして製薬会社に10年勤務し、30過ぎでST養成校へ。現在は臨床で言語聴覚士として10年以上の経験を持つ。令和4年に公認心理師を取得。
【専門】小児の言語発達とコミュニケーション支援。