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【実践編】不注意・衝動的な子供への具体的支援⑦選〜言語聴覚士が解説する環境と声掛けの工夫〜

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目次

集中できない・待てない子供達と日々向き合う皆様へ

はるみち

小児言語聴覚士・公認心理師のはるみちです

話を聞いて欲しいのに、すぐに別のものに気が散ったり、ふらっと立ち歩いてしまう。

気になる物が目に入ったら考えるよりも先にダッシュしている。

「不注意」や「衝動的な行動」が目立つ子供への関わりに悩まれてはいませんか?

発達支援の現場ではこんな声をよく聞きます。

パパAさん

毎度叱っているけどうまくいかないんです

保育士Bさん

どう伝えたらうまく伝わるんでしょう?

言葉だけでは、感情だけでは、残念ながら子供へうまく伝わらないことが多いのです。

この記事では、言語聴覚士・公認心理師として子供たちに支援を行ってきた経験を元に、家庭や保育現場でできる具体的な支援の工夫を7つご紹介します。

「集中できない」「待てない」子供達が無理なく少しずつ力を伸ばせるようなヒントをまとめてみました。

今日から使える内容ばかりですので、是非参考にしてみてください。

不注意や衝動性的な行動の背後にあるもの

  • じっと座っていられない
  • 話を最後まで聞けない
  • 関心のある物が目に入ると飛び出してしまう

上記のような行動を目の当たりにすると「わがままだ」「注意力が足りない」と感じてしまうかもしれません。

ですが、実際にはそれらの行動の背景には、脳の発達の段階的な未熟さが関係していることが多くあります。

自己制御する力がまだ育っていない

特に未就学の子供達は、脳の実行機能注意機能と言われる部分の未熟さが目立ちます。

そのため大人が求めるような「我慢する」「集中する」といった行動が難しいのは、ある意味当然といえます。

身長が小さいから高いところに手が届かないのはわかりやすいけど、脳機能のせいで“我慢できない”のはわかりにくいのかもですね。

刺激に対して敏感

子供にとって情報が多すぎる空間や、リラックスできていない環境では脳の反応が過敏になり易くなります。

そのため注意が散り易くなったり、意図せず衝動的な行動が出てしまうことがあります。

「できない」のではなく「まだ難しい」だけ

子供達は決してわざと飛び出したりしているわけではありません。

“できない”のではなく“今はまだ難しいと捉える視点が、関わり方を変える第一歩です。

大人も人間なので腹立つ時は腹が立ちますが、理由があることを知っている方が、納得できることもあるかもですね。

他にも不注意や衝動性についての理解を深めたい方は、以下の記事も参考にされてみて下さい。

実際の支援7選

これらの内容は実際に療育の現場で私が実践しているものです。

仕事だけでなくプライベートの子育て時にも日常的に使っています。「無意識にやってたわ」という方もいらっしゃるかもしれません。

①「やることカード」で“今”に集中

まずは一つの絵柄(写真)で始めて、「“今”◯◯をする時」を声掛け(聴覚)だけでなく視覚でも伝えてあげます。

情報量を限定し、今やることを明確にすることで、目の前の活動に集中しやすくするのが目的です。

終わったらカードを裏返したり、上記写真のカードの場合は裏面に貼ったり、ポケットに仕舞います。

慣れてきたら「①いまは◯◯、次は②△△をする」と短い時系列で“今”そして“”やることを提示してあげます。

②「スケジュールカード」で“見通し”を立てる

①「やることカード」の1枚提示に慣れてくると「次に何があるか」を見通せるようになってきます。

ここで登場するのがスケジュールカード(見通し表)。

最初は「通所の時だけ」「帰るまでの流れだけ」といった短い時間で提示し、少しずつ見通しの範囲を広げていきます。

やることカードの集中力と、スケジュールカードの見通し力を段階的に身につけていくことが目的です。

③課題は短く・小さく区切る

私が勤める児童発達支援事業所では、プレイ活動の前に必ず児童それぞれの課題タイムがあります。

課題は他児と同じということは殆どありません

仮に同じくらいの発達年齢だとしても、好きな題材や性格によっても課題の内容が変化します。

共通していることは以下のことです。

  • 数分で終わる
  • 3個で終わる

必ず3個で終わることから見通しがつく。

数分で終える内容を提供することで注意力を育てる。このような意図があります。

④「選ぶ」ことで主体性を引き出す

我々大人もやらされ感が強いと、余計に集中しづらいことがありませんか?

集中しづらい子には「どっちからやる?」「この中から選んでね」と選択肢を提示します。

本人が選んで決めたことは集中しやすく、また途中の離脱を軽減する心理効果(自己決定理論/心理的所有感)が働きます。

⑤注意すべきポイントを事前に伝える

活動前に注意点を伝えることで、子供の心の準備に役立ちます。

⑥活動と活動の間に休憩スイッチ

活動が続くと注意が持続しません。

切り替えのタイミングで短い休憩を挟むことでリフレッシュできます。

上記のラグのように、休む“場所”や“アイテム”が固定化されていると、より安心感変えられ次の活動に繋げやすくなります。

⑦“できた”への即レス

ついつい“できていないこと”ばかり言われてしまう子供さんたち。

だからこそ「できた」へのフィードバックは本人にとって嬉しいものです。

「最後まで聞いてくれたね!ありがとう。」など具体的な相手の行動を言葉にします。

私が実際の療育現場で大切にしているのは“褒める”よりも“ありがとう”を伝える事。

なぜなら“ありがとう”は子供に限らず、「自分の行動が誰かの役に立った。感謝された」という他者貢献の経験を積み重ねることができるからです。

他者貢献は“次(も)こうしてみよう”という動機づけにも繋がります。

“できない子供”でなく“できる関わり方を知る大人”へ

不注意や衝動性のある子供たちはやる気がないわけでも、わざとふざけているわけでもありません。

「集中のしづらさ」や「切り替えにくさ」という特性が行動に現れているだけだったりします。

私たち大人が原因や特性を理解し、環境や声掛けの工夫をしてあげるだけでも、子供たちを少しずつ落ち着いた行動へ導いてあげることが可能です。

焦らず、少しずつでも“できる関わり方”を一緒に学んでいきましょう。

著者写真

はるみち(言語聴覚士/公認心理師)

【経歴】臨床で10年以上の経験。令和4年に公認心理師を取得。【専門】小児の言語発達とコミュニケーション支援。

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