インリアル・アプローチとは?“発語を促すための実践方法”を言語聴覚士が徹底解説

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はるみち

言語聴覚士公認心理師のはるみちです

「毎日話しかけているのに、なかなか言葉が増えない…」

「どう関わったら “子供の話したい気持ち” が育つのかわからない」

私は現在未就学児を対象に発達の支援を行っていますが、そんな不安やモヤモヤを抱えている親御さんは本当に多くいらっしゃいます。

療育を検討・利用している親御さんの相談内容の多くは『ことばに関する悩み』

私が勤める事業所では実に8割を占めていました。各事業所の特徴によって割合は異なると思います)

それらの相談から私が言語発達支援の現場に入る時は、インリアル・アプローチという概念をベースに子供達と関わっています。

インリアル・アプローチは、『子供のペースに合わせてことばの芽を育てる、日常生活からできる大人の関わり方』のこと。

詳しい概念や基本姿勢、テクニックの説明についてはこちらの記事で解説しています👇

ただ、インリアル・アプローチを調べたり、学んだ方からこういった意見をよく聞きます。

考え方はわかった。で?実際どうやるの?

遊びは何がいいの?声の掛け方は?

このように理屈はなんとなくわかったけど、「結局どうやるのよ?」という壁にぶつかりがち。

そこで今回の記事では以下の特徴がある子を対象にした、今日から家庭でできる “超具体的なインリアルの実践方法” をまとめました。

「で?どうやればいい?」「どうやって言葉を引き出す?」がわかる内容になっています。

このような特徴のある子への“コミュニケーション支援・実践記事”です
  • 視線が合いにくい子
  • “ひと”より“モノ”に注目しやすい子
  • 一人あそびばかりしている子
  • 言葉の発達がゆっくりな子

ここからはどう関わるとやりとり・発語・2語文が伸びやすいのかを、目的別にやさしく解説していきます。

よろしければ最後までお付き合いください。

関連文献:表出の少ない自閉症児とのコミュニケーションを広げる関わり

目次

目が合わない・他人への興味関心が低い子に

一人あそびしている子供を親が心配そうに見ている。

ここの目的で大事なのは、視線を「合わせさせる」ことではなく、“視線を向けたくなる状況”を大人が作っていくこと

ここでは「ことばをどう増やすか」の前に“人と何かを共有する力が育っているか”が重要になります。

この力は「共同注意」と呼ばれ、発語・コミュニケーションの土台となる重要な発達段階です。

共同注意について理解を深めたい方はコチラ

大人の「見て見て!(グイグイ)」は逆効果になりがちなので注意が必要。

「誰かと共有する楽しさ」が生まれる場面を大人が作る

はるみち

子供の興味・関心を大人に向け易くするための、ざっくり4ステップ

STEP
準備

子供の好きな玩具・キャラ・遊びを確認

STEP
遊びの“空間”を共有

一緒に遊ぶことを急がず、子供のそばにいる

STEP
遊び(おもちゃ)の共有

子供の動きや遊びを大人がマネして遊びを共有

STEP
関心・興味

遊び・おもちゃを通して大人へ関心を向ける機会を増やす

誰かと何かを共有する楽しさを子供が知ることは、言葉やコミュニケーションの発達にとってとても大切な土台づくり

視線の合いにくい子だけでなく、後述する言葉がゆっくりなお子さんたちにもベースとして使えるテクニックです。

ここから具体的な場面を想定して進めてみましょう。

遊びの場面で(例:積み木・ブロック好きを確認)

  1. 子供が積み木を積んでいる→大人はすぐに話しかけない(サイレンス・オブザベーション)
  2. 子供と同じ様な形を大人が積み上げてみる(ミラリング+リズムを揃える)
  3. 子供はそばにいる大人が同じ動きをしている事で視線を大人(の方)へ向けやすくなる
ポイント解説

上記で特に大切なのは❷▶︎❸の流れ。

ここが「狭い自分と玩具だけの世界」から外への関心視線)が生まれるきっかけです。

大人は「あなたの遊びに興味があるんだ」という気持ちを“行動”で示しましょう。

ミラリングは「相手は自分と同じ、似ている」と感じる事で安心感や親近感を覚える心理効果が働きます。

並行遊びでも構わないので、“いっしょにやっているカンジ”が出るだけで子供は大人の積み木を介して大人の存在に意識が向きやすくなります。これが視線=他(者)への関心”の始まり

ちょっと予想外の動きで自然な視線を引き出す

前項では大人が“子供と同じ動きをする”事で子供の視線を引き出す内容について解説しました。

ここでは前項を基本としながらも、敢えてリズムをを崩す事で子供の視線を引き出します。

遊びの場面で(例:シャボン玉)

  1. 子供がシャボン玉を吹いている→大人は見守るだけ(SOUL 空間の共有)
  2. 大人もおもむろにシャボン玉を吹きはじめる(ミラリング+リズム)
  3. ①〜②の流れで子供の意識を大人に向けやすくする(遊びの共有)
ポイント解説

子供が「あれ?」「おっ?」となる事が狙い。

ただ、インリアル・アプローチでは「子供のリズムに合わせること(コミュニケーションの原則)」を基本にするので、過剰な仕掛けはNG。基本のリズムをまずはしっかり作りましょう。

期待や要求を生む“間”で視線を引き出す

子供のリズムが大切だと前項で述べましたが、適度にそれを崩すこともまた大切です。

ここではまた違ったリズムの変化をお伝えします。

遊びの場面で(例:ブロック)

  1. 子供がブロック遊びをしている→大人はまず見守る(SOUL)
  2. 大人もブロック遊びを始め(ミラリング)そして1つ、2つ、3つ…とブロックを子供に渡していく
  3. ①〜②のリズムをつくり(コミュニケーションの原則)、大人はブロックを渡す手を一旦止める
  4. 子供が「あれ?」「次は?」の視線を向けてくれるように、リズムを作ったうえで時々リズムを変える
ポイント解説

シャボン玉の時とは異なり、やりとりのリズムを瞬間的に崩す事で子が「ん?」となる事が狙い。

ここでも間(タメ)の作りが頻回だったり、長すぎるとやりとりのリズムそのものが崩れてしまうことには留意が必要。

コツは親子の目線が交錯する高さでブロックを持つ・渡すこと(物理的に視線が合いやすくなる)

「欲しいな」の目線は要求・期待を他者)に向けるアクションであり、言葉を発達させる大切な土台の一つとなります。

(まとめ)なかなか目が合わない子に向けた実践インリアル

  • 子供の興味や関心の高い題材を普段から把握しておく
  • 基本姿勢のSOULからはじめる
  • 遊びのリズム保持をベースに、“崩し”を適度に入れる
  • 親の動作の基本はミラリング 

子供の好きな遊びやキャラなどを介し、大人への興味・関心を拡大させる。その結果アイコンタクトや要求の機会を増やして行こうという取り組みをご紹介しました。

意味のある言葉がまだ出ていない子に

基本的な考え方は前項と同じで「たくさん◯◯させる」のではなく子供が「〇〇したくなる」状況を作ることが大切。

子供が音や言葉を捕まえやすく、そして話しやすくなる状況をインリアル・アプローチを用いて一緒に作ってみましょう。

すぐ消えてしまう“音声”をキャッチしやすくしてあげよう

目に見えるもの(視覚情報)よりも、耳で聞こえるもの(聴覚情報)の方がすぐに消えてしまうものです。

言語発達がゆっくりな子は、聴覚情報を捕まえることが特に苦手な場合が多い

そんな捕まえにくい聴覚情報を、どうしたらキャッチしやすくできるのでしょうか?

❌こんな聴覚情報派つかまえにくい(例)
  • 別に好きでもない人やモノが
  • 特に注目もしていない状況で
  • うるさいかったり、ドキドキしたり、いろんな刺激がある中で
  • 長くて意味のわからん音(ことば)を
  • なんか延々と話してる

私たち大人も、こんな条件下で言葉や意味を捕まえるのは難しいです。というか寝ますよね。無理

つまり、この条件をひっくり返してあげると、音(言葉)を捕まえやすくなります。

⭕️これなら子供が音を捕まえやすい(例)
  • 安心する 好きな人やモノが
  • 興味関心をくすぐる状況で
  • 気が散らず、気持ちが落ち着く時に
  • 短く、なんか知ってる音(ことば)を
  • わかりやすく言ってくれている

この条件を具体的な場面に落とし込んでみましょう。

読み聞かせ(絵本)の場面で

子供が音を捕まえやすい例
  • 安心する 好きな人やモノが
    ママやパパが
  • 興味関心をくすぐる状況で
    面白そうな絵本を開いて
  • 気が散らず、気持ちが落ち着く時に
    寝る前のお布団の中で
  • 短く、なんか知ってる音(ことば)を
    馴染みのある果物や好きなキャラ名を
  • わかりやすく言ってくれている
    オノマトペ(※)や単語で短く、繰り返し語りかけてくれる
    ※オノマトペ=「わんわん・どーん・ぷかぷか・くるくる」など、“本当は違うけど人間が口に出して表現するととそんな感じになる音”のこと

これが一つのモデルになります。

はるみち

ここで特に注目したいのが、以下のような子供の反応です

  1. 親の目を見てくる
    (共有や意思表示ができている証拠。SOULの姿勢で気持ちを汲み取ろう)
  2. 絵本をめくろうとしてくれている
    (子供主導ができている。親が待ってあげられている)
  3. ジーっとページを見つめている
    (事物に集中できている。理解の試み)
  4. 指差しをしている
    (事物に集中できている。❸以上になんらかの意思・欲求が乗っている)
  5. 声が出た
    (言葉でなくてもOK。事物に集中できている。❹同様なんらかの意思が乗っている)

特に❸〜❺の反応が出ていたらモニタリング(子供の言葉や音をそのまま真似る)・パラレルトーク(子供の気持ち・行動を言語化してあげる)の大チャンス

子の注目反応親のオススメ行動期待される
結果
親の目を見る微笑み返す・やりとりの強化
・より深い共有と学習効果
絵本をめくる何もしない
・子主導の経験値⤴️
・集中力⤴️
本を見つめる単語や擬音を添える有意味のインプット
指差し単語や擬音を添える有意味語のインプット
声が出た声を真似る
単語や擬音を添える
有意味語のインプット

このように、絵本は親子の間で楽しみを共有し言葉を引き出す強力なお助けアイテムになり得ます。

絵本が言葉を引き出してくれる理由について詳しくはこちら

(まとめ)意味のある言葉がまだ出ない子に向けた実践インリアル

  • 子供が音(ことば)をキャッチしやすい環境・条件を整える
  • 読み聞かせの時はSOULの姿勢で子供の反応を見守る
  • 子からページや仕掛けをめくろうとしてくれるとgood
  • 特定の絵をじっと見たり、声を出したり、指差したら親が音をまね言葉を添えてあげる決めポイント)
STEP
楽しく共有▶︎関心を生む機会⤴️

注意力が上がり音をキャッチしやすくなる

STEP
理解▶︎表現したい欲求を刺激

何度も見る好みのシーン(絵)に、より興味・関心がわく

STEP
絵➕音(ことば)=意味ある言葉

よくにする好きな絵に、毎回同じ音(ことば)をにすることで絵と言葉の関係の理解が深まる。

STEP
理解▶︎発語・表出

理解(1〜3step)の繰り返し意味ある言葉の表出につながる。

意味のある言葉を引き出す、STオススメの絵本を知りたい方はこちら

発語は単語がほとんどで、文がなかなか出ない子に

ここまでの大まかな流れは以下❶〜❸です。

  • 共有関心の土台を作り、
  • 音(ことば)が捕まえられるようになり
  • 単語が出るようになったら
  • 次は2語文の表出ですね👈イマココ

作りやすい2語文は名詞➕動詞(ジェスチャーつき)

キャッチしやすい言葉は主に名詞(ママ・パパなど具体語)、もしくはよく使う動詞(ちょうだい・おねがい・ねんねなどジェスチャーがつけられるもの)やオノマトペ(ブーブー ビューン など)です。

そのため獲得しやすい2語文は以下のような例になります。

名詞➕動詞の例
  • パパ ねんね
  • ママ オネガイ
  • パン ちょうだい
  • わんわん バイバイ
  • アンパンマン ビューン など

他にも「ブーブ あお(青い車)」みたいに名詞に子供の好みの形容詞がくっつく場合もあります。「大きい」も抽象的な概念の中では理解がしやすく、ジェスチャーもつけやすい

それでは具体的な場面で子供が“ことばを繋げたくなる状況”を一緒に見ていきましょう。

読み聞かせ(絵本)の場面で

基本はこれまでと変わりません。ただ、使うテクニックが少し増えます。

肝となるテクニックはモデリング(見ているものを実況してあげる)と、エキスパンション(子供の言葉を文法的・意味的に広げてあげる)の2つ。

絵本の例子供の反応例親のオススメ行動
アンパンマンが飛ぶ…パンまんアンパンマン ビューン
りんごが書いてあるりーご!りんご あむあむorどうぞ
赤いオバケじーっと見る赤いオバケだね

安定して発語できる名詞+ジェスチャー付き動作語をエキスパンションしてあげるのは特にオススメです。

(まとめ)文での表出が出づらいに子向けの実践インリアル

これまでの流れを大まかな流れでまとめます。

STEP
楽しく共有▶︎関心を生む機会⤴️
STEP
関心▶︎表現したい欲求を刺激
STEP
絵➕音(ことば)=意味ある言葉
STEP
理解▶︎発語・表出
STEP
単語➕動作or状態=2語文

発語してくれる単語に、動き・大きさ・色などの情報を足してあげる(エキスパンション)

STEP
理解▶︎2語文発話へ

理解(主にstep5)の積み重ねが2語文の表出につながる。

2語文を引き出す、STオススメの絵本を知りたい方はこちら

全体まとめ|インリアル・アプローチの実践は「子どもの今」に合わせること

子供が“今”している事に大人が参加し、やりとりや言葉が生まれる土台を作る。

これがインリアル_アプローチの本質的な考え方です。今回の記事では大まかに以下の内容について記載しました。

困りごと対応
・目が合いにくい“共有できる楽しみ”を作る
・発語がない絵本で言葉を
キャッチしやすく
・文表出がない言葉を足す 
ジェスチャー
解説してあげる

これらはどれも家庭で無理なく続けられるものばかりです。日々の関わりの中でぜひ一つ試してみてください。

小さな反応の積み重ねが、子供達の大きな成長へとつながっていきますよ。

著者写真

はるみち(言語聴覚士/公認心理師)

【経歴】MRとして製薬会社に10年勤務し、30歳過ぎでST養成校へ。現在は臨床で言語聴覚士として10年以上の経験を持つ。令和4年に公認心理師を取得。
【専門】小児の言語発達とコミュニケーション支援。

→ 詳しいプロフィールはこちら

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