3歳で言葉が遅れている…様子見??
私は現在、発達支援事業所で働いていますが、以下のような相談を受ける事がよくあります。



うちの子、3歳になってもなかなか言葉が増えません‥
周りと比べて心配になります。
特に3歳前後は“言葉の伸び方”に大きな個人差が目立つ時期です。2歳代まであまり話さなかった子が3歳を過ぎて急におしゃべりになることも珍しくありません。
この頃の言葉は訓練等で教え込むのではなく、安心できる“言葉が出やすい環境”を作ることが大切になります。
ただ、「じゃあ、待っていれば大丈夫なのかな…」とも思う一方で、家庭でできる工夫があれば試してみたいですよね。
そこで提案したいのが絵本の読み聞かせです。
なぜなら絵本の読み聞かせは、今の言葉を大切にしながら、次のステップへ楽しく自然に導いてくれる有効な手段の一つだからです。
言語聴覚士がいる療育の現場では多く取り入れられており、私も日々実践しています。
今回の記事からは以下のような事がわかります。
- 3歳児の言葉を引き出すオススメの絵本7つ
- 言語聴覚士の立場からオススメする理由
- 療育現場や実生活での使用例
もし参考になれば、今日からお子さんとの関わりにぜひ取り入れてみてください。
先にオススメ絵本タイトルだけ一覧でまとめますので、気になる絵本があればすぐにチェックしてみてくださいね。
受診や相談を検討してもいいサイン


一方、いつも以下のような反応があるのであれば、かかりつけ医や通園している園の先生に相談してみても良いかもしれません。
- 名前を呼んでも反応しない
- 目がほとんど合わない
- 指差しなどの意思表出をしない
- 無表情
とりあえずの相談は、早めの安心につながります。親御さん自身の「しんどいな」も十分なサインの一つです。
専門機関への相談について詳しく知りたい方はこちら
言葉を引き出すのに絵本をオススメする理由


絵本が言葉を引き出してくれる理由は以下です。
- 楽しみながら聴く力が育つ
- 親子のやりとりが自然に増える
- 話したい(気持ちを外に出したい)意欲を引き出してくれる
気に入ったもの・好きなものに対する子供の集中力には凄まじいものがありますよね。
普段じっとしていられない子供さんでも、好きな絵本を前にするとジッと見つめ、読み手の声に集中できる事も多々あります。
より詳しく知りたい方はコチラ
3歳の言葉を引き出すオススメ絵本7選


オススメ絵本1 おめんです


- 「めくってみて?」から親子のやりとり⤴️コミュニケーションの土台作りになる
- 「めくる」アクションが自然に要求されることで、絵本への没入感が増える
- 登場キャラの表情や鳴き声のまねっこが楽しめる
- 「ゴリラ うっほっほ」「ライオンがおー」と2語文の促しにも良い



めくったお面を自分の顔に当てて「先生みてみて」と支援員の関心を引こうとする子供が続出でした。
他者と楽しみを共有できる事は言語発達の上でとても大切です。
オススメ絵本2 しろくまちゃんのホットケーキ


- 「ぽたぁん」「ぷつぷつ」「まぁだまだ」など声(音)マネがしやすく語感を育てやすい
- 「準備→作る→食べる→洗う」とストーリー展開を追う練習になる
- 生活に身近な語がだくさん(卵 お皿など)なので、イメージ・理解がしやすい



短いながらもストーリーを追う本の入門編として最適。
これまでの流れを記憶し、次のシーンへ切り替える内容が「作る→食べる→…」で可愛く表現されています。
焼けたホットケーキがなんとも美味しそう…
オススメ絵本3 いろいろばぁシリーズ


- ページをめくると「ばぁ」「ポッポッ」「ぶにゅ」と色オバケが飛び出す。「めくりたくなる」シンプルな仕掛けがズルい
- 「色」は子供が大好きで身近な題材の一つ。色概念の学習をこの上なく楽しくできてしまう
- 2語文「車×走る」よりも「赤い×車」の方が難易度が低い。やさしめの2語文の土台になる



具体的な単語はまだ全然言わないのに、先に「きいろ…」と言ってくれた児童さん(当時3歳)がいました。一般論からすると順番は逆ですが、療育現場では結構“あるある”だったりします。
シリーズセットも欲しくなってしまします…


オススメ絵本4 ねないこだれだ


- 「怖い」がわかるから「楽しい」が際立つ。感情の分化に大切な役割を果たしてくれる
- ドキドキする世界観のため、子供が絵本から目を離せなくなる→よく言葉を聞く
- 聞いている子供への“問いかけ”の様に感じる要素が沢山あることで、想像力を掻き立てる



ちょっと怖いけど、余計に目が離せない・その場から離れられない“引力?”みたいなものがあるんでしょうか。
本を閉じたら「おしまい」といつもの世界に帰って来れる安心感もセットでgood
オススメ絵本5 どうぞのいす


- 短いストーリーの繰り返しで、登場する動物や食べ物がくるくる変わる。繰り返しは“予測・期待”などの心理効果が働き言葉をキャッチしやすくなる
- 「あとのひと」を想う“他者視点”の理解を自然に深め、“心の理論”に繋げる土台となる
- 絵がとても優しいタッチなので、穏やかな気持ちでお話に集中しやすい



文字数は今回の7選中いちばん多いですが、ショートストーリーの繰り返しのため、「次は“クマさん”がくる」予想から単語が出易くなる場合も多いです。
ページをめくった瞬間子供達から
「リスさん」とか言われることも多々。
オススメ絵本6 わたしのワンピース


- お話全体のリズムが良い。使っている単語も子供にとっても馴染みのある語が多い。
- 上記に加えて擬音や、ストーリーの難易度などのバランスが絶妙
- そばにある大自然が、次々とワンピースの柄に変わるパターンが子供達にインプットされやすく想像力をかき立てる設定になっている



「わぁ」「あれぇ」「あらら」といった感嘆詞が散りばめられています。
読み手の抑揚やアクションがつけやすく、子供にとってマネがしやすい条件が整う。
まだお話しが充分でない利用児さん(当時3歳)が「あれぇ」で上半身ごと頭を傾げてくれた時には手応えを感じました。
動作のマネは言葉のマネに繋がりやすいです。
オススメ絵本7 なにをたべてきたの


- ぶたくんが食べる果物や、食べたあとのお腹の色変化で言葉のインプットや指差しアウトプットが自然にできる。
- 「お腹がきいろ。レモンだね。」
「お腹が赤い。なにをたべたんだろ?」とやりとりが沢山できます。 - 「メロン、メロン、とても大きなメロン」と本文でリズムよく単語を繰り返す



ぶたくんのお腹の色の変化から「食べて無くなった物がお腹にあるよ。食べたのは“りんご”だ」と“食べる”行為に情報がわかりやすくまとめられています。
お腹の色が赤・黄・緑と複数あると「どれがメロンだと思う?」から指差しを促しやすい。
また、慣れてきたら「これ(赤)なんだろね?」と楽しく言葉のやりとりができますよ。
まとめ
3歳児の言葉を引き出してくれるアイテムとして絵本を紹介してきました。
早速実践していだだくに越したことはありませんが、以下のような気持ちでいるくらいがちょうどいいのかもしれません。
絵本を使って言葉を育てる
絵本で楽しくやりとりをした結果、言葉が育つ
今回ご紹介した7冊は以下の様な特徴があります
- 食べ物や色など身近な語彙で覚えやすいもの
- 短くリズムを生む単語や文で発語を促す
- ストーリーや繰り返しで理解力を伸ばす
ストーリー性が入ってきているのが2歳ごろとは特に異なる部分ですね。
是非気になる本から手に取って、お子さんと一緒に絵本と言葉の世界を楽しんでみてください。


はるみち(言語聴覚士/公認心理師)
【経歴】MRとして製薬会社に10年勤務し、30過ぎでST養成校へ。現在は臨床で言語聴覚士として10年以上の経験を持つ。令和4年に公認心理師を取得。
【専門】小児の言語発達とコミュニケーション支援。