私はいま児童発達支援事業所で勤めていますが、日々こんな相談を受けます。



うちの子もうすぐ2歳なのに「アンパンマン」しか言わないんです



3歳になる子ですが、イマイチ何言ってるかわからない…たくさん喋ってくれるんだけど…
このように、お子さんの言葉の発達に悩みを抱えている親御さんが多くいらっしゃいます。
言葉の遅れはどうしても周囲のお友達や兄弟児と比べてしまい、不安になりますよね。私も父親として過去に同じような気持ちになることが度々ありました。
そんな時にオススメしたい事のひとつが“絵本の読み聞かせ”です。
絵本の読み聞かせは療育現場でもよく行われますが、ご家庭でも手軽に楽しく実践できる言葉の練習になります。
実際、私も児童発達支援の現場で絵本の読み聞かせは2歳〜6歳の子供にまで行い、プライベートでも0歳の頃から二人の子供に読み聞かせを行なっています。
特に「忙しくて子供との時間をあまりとってあげられていない…」と日々胸を痛めているママ・パパにオススメしたいです。絵本には子供との空間や時間を濃密に共有してくれるパワーがあります。
この記事を読んでいただくことで、以下の事がわかります。
- 言葉の遅れに絵本がオススメな理由
- 絵本の選び方
- 今日からできる読み聞かせ方のコツ
宜しければ最後までお付き合いください。
絵本がなぜ言葉の発達を促してくれるのか


絵本が言葉の発達を促す理由は以下の5つです。
一つずつ見ていきましょう。
①短くリズミカルな言葉が覚えやすい
何度も繰り返されるフレーズは耳・脳にとどめやすく、発語のきっかけになりやすい。
子供にとっていつどこから飛んでくるかわからない、さまざまな長さ速さの言葉をキャッチするのは難しい場合が多い。
それよりも同じ方向から、短い言葉がリズムよく飛んでくる方がキャッチしやすいのです。
まずキャッチ(理解)することが、投げ返す(発語)につながって行きます。
②指差しやジェスチャーを促す内容が多い


指差しやジェスチャーは言葉の前段階にあるもの。促されると発語への着実な足がかりになります。
③親子のやりとりが増える
絵本の内容を共有することで「どこにある?」や同じ動作を親子でするなど、やりとりから言葉のインプットとアウトプットが進む。
④目(絵)と耳(言葉)で言葉をキャッチ


子供にとって耳だけでは言葉のキャッチが難しいもの。目(絵)と耳に繰り返される音が加わることで言葉をキャッチしやすくなります。
⑤楽しい
言葉に限らず、学習効果を何よりも底上げしてくれるのが楽しさです。ただただ言葉に触れるよりも集中力の向上が期待できます。
忙しい毎日の限られた時間の中で、ママ・パパと絵本の楽しさを共有する空間や時間は子供の情緒に安定感を与えてくれるはずです。
言語発達を促す絵本の選び方



絵本がいいのはわかったけど、結局どんなのがいいの??
こんな声が聞こえてきそうなので、ここではどんな本を選べばいいのかポイントを上げていきます。
繰り返し(フレーズ)が多い


「くるくる」「もぐもぐ」「ワンワン」などオノマトペと言われる繰り返しのある言葉は子供の耳に残りやすいと言われます。加えて大人が動作も同時に見せてあげられるので「絵↔︎ことば↔︎動作」によって言葉と視覚的に紐づけられる情報が多いことも特徴的ですね。
また同じフレーズが繰り返されると、子供の中で「次◯◯って言うな」と予測がたちます。
予測がたつということは、次に来る◯◯という言葉をキャッチする準備が整っている事を意味します。この予測が言葉のインプットに重要な要素です。
子供への問いかけがたくさんある
「〇〇どこだ?」「どうしてだろうね?」など問いかけがあることで、自然と親子間でやりとりが生まれます。
問いかけがあることで、子供は絵本に対して参加する機会が増えます。参加する形は指差しなのか、声なのか、はたまた目線なのか。
いずれにせよ子供のアウトプット(表出)の機会があるということは、意思を表現する機会が沢山あることを意味します。インプットだけでなく、アウトプットも発達・学習には大切だと考えられます。
普段よく見るものが題材になっている
身近によく見るものはイメージとして記憶されやすいと考えられます。
同じものが絵本に何度も登場してくれるとこんなリアクションが期待できます。



アレね。うんうん知ってる。よく見るアレ🍎
このように「絵↔︎言葉↔︎記憶イメージ」と、言葉を補完してくれる情報がたくさんあることで言葉をとどめ易くしてくれるのです。
子供が“触れる”仕掛けがある
触ったりめくったりすることは、子供が絵本に能動的に参加する機会が自然にあることを意味します。
それが意思表出の機会になることは前述の通りです。併せて「触れる」ことは触覚からも言葉をインプットすることになるので、より高い学習効果が期待できます。



4つのポイントを意識して、絵本を選んでみましょう。
2歳/3歳/4歳むけ:具体的な絵本タイトルを知りたい方はこちら
言語聴覚士おすすめ“読み聞かせの工夫”


読み聞かせはちょっとした事を親が意識するだけで、効果的に子供が楽しみ・学ぶことが期待できます。ここではそんな工夫を紹介していきます。
擬音・セリフは大袈裟に
繰り返し耳に入る擬音やセリフの箇所は声を大きくしたり、高くすることで子供に聞こえる言葉に色がついたように強調されます。お話声にマーカーを引いてあげるようなイメージですね。
場合にはよってはジェスチャー・アクションを同時に見せてあげると、より目と耳に言葉が残りやすい。
子供がリラックスできる場所・時間で
子供がホッとできるお部屋や、寝る前などの時間を選んであげることがおすすめです。緊張状態や興奮状態よりも学習効率が高いと考えられるためです。
“就寝前の寝室”などに設定をしてみると、食後の服薬の様に習慣化も期待できます。
あとは本人が読んで欲しいタイミングに読んであげる事ができたらとても良いですね。
絵本の動作をマネする
言葉の表出は言葉のマネから始まります。動作の表出は動作のマネから始まります。
動作のまねっこは言葉のまねっこの前段階にあるため、絵本の動作を親子で楽しみながら真似をすることは言葉の表出に有効だと考えられます。
子供の反応を待つ
自然な問いかけはとても有効ですが「何だと思う?」「言ってみて?」「やってみて?」とグイグイ反応を引き出しにいくのは絶対NG。
何か子供からの反応が出そうな時はひと呼吸待ってみましょう。
くりかえし くりかえし
絵本中の繰り返しフレーズがとても良いのは前述の通りですが、同じ本だとしても何回も繰り返し読んであげましょう。



ま〜た同じやつ?色んな本を読んだ方がためになるんじゃ…?
という考えを持たれる親御さんも少なくないでしょう。
が、同じ本を繰り返すメリットは以下のようなものがあリます。
- 次のセリフやフレーズを子供が予測できるようになる
- 予測できる言葉はつかまえやすい
- 捕まえた言葉はインプットしやすい
- インプットした言葉はアウトプット(表出)へ繋げやすい
このように繰り返し積み上げることの効果は大きいと考えられます。
まとめ
- 擬音・セリフは大袈裟に
- 子供がリラックスできる時間・場所で
- 絵本の動作を真似する
- 子供の反応を待つ
- くりかえし 繰り返し
子供に対して「喋って!」「言って言って」と圧をかける事は逆効果であることが多いです。
子供により適した絵本を選んで、楽しく言葉を学んで頂ける一助になれば幸いです。
年齢別、具体的なオススメ絵本タイトルのまとめはコチラ


はるみち(言語聴覚士/公認心理師)
【経歴】MRとして製薬会社に10年勤務し、30過ぎでST養成校へ。現在は臨床で言語聴覚士として10年以上の経験を持つ。令和4年に公認心理師を取得。
【専門】小児の言語発達とコミュニケーション支援。