うちの子は言葉が遅れているのかな?
療育・支援を受けてはいるけど、家で何かできることはないかな?
発達支援の仕事に就いたけれど、基本的に子供達とどう関わればいいんだろう?
そんな疑問にお応えする一つの方法として、インリアル・アプローチという考え方があります。
今回はそのインリアル・アプローチについて、
- 基本姿勢
- 原則
- 技法
と3つのパーツに分けてお話をさせて頂きます。
一つでも
「あ、これ できるかも」
を発見していただけると幸いです。
よろしければ最後までお付き合いください。
インリアル・アプローチとは
インリアルアプローチとは、他者との関わりが上手にできなかったり、ことばの発達に遅れが見られる子供達に対する大人の関わり方のことです。
身振りや視線といった、ことばになる前の表現を互いに共有すること。
基本的な姿勢や技法を理解した大人が関わる事で、子供の表現する意欲を高めるなど。
療育現場等で広く使われていますが、遊びや普段の何気ない生活場面でも実践される事がより望ましいと考えられます。
関わりの基本姿勢「SOUL」
関わり方の基本姿勢Silence Obsevation Understanding Listening
以上4つの頭文字をとって「SOUL」と表現されます。
格闘技に例えると「攻撃」でも「守備」でもなく「構え」が最も近いんじゃないでしょうか。
それぞれみていきましょう。
Silence (サイレンス:静かに見守る)
子供自身から動き出すまで、大人から声をかけたり手を振ったりしない。
今居る環境に子供が慣れ、活動するまで本当に見ているだけ。意外と難しいです。
Observation (オブザベーション:観察する)
積み木を取ろうとしているな
じーっと動かないな
など、子供の状態を出来るだけ客観的に観察します。
Understanding(アンダースタンディング:深く理解する)
客観的なObservationに対して
主観的なUnderstandingと考えられます。
積み木を取ろうとしているな(客観)⇨ボールよりも積み木が好みなのかな(主観)
じーっと動かないな(客観)⇨まだこの場所に慣れないのかな(主観)
このように理解を示すことと言われます。
Listening(リスニング:耳を傾ける)
言葉だけでなく音
それに留まらずジェスチャーや運動といった
子供が表現するアクションに目や耳をしっかりと傾けます。
コミュニケーションの原則
基本姿勢に続いて、ここからはコミュニケーションの原則についてお伝えしていこうと思います。
子供とやりとりをする際に意識すべきルール
と解釈すると良いかもしれません。
大人が子供の発達レベルに合わせる
発達レベルと言ってもそんなに難しく考える必要はありません。
積み木が2段組める子供に対して
大人が10段組んで見せても「ポカーン??」となってしまいがち。
一緒に2段の積み木遊びを共有するイメージです。
会話や遊びの主導権を子供に持たせる
大人発信の
「これしよっか」
「あれはどうかな」
はインリアル・アプローチの考え方から逸れてしまう事が多くあります。
生活空間や療育空間といった環境の中で、子供が反応し表現するものに大人が合わせる事が大切です。
子供が始めるまで待ち時間をとる
子供が何かを始める時はゆっくりな事が多いですよね。
大人はヤキモキしたり、先回りしてあげたくなることも少なくないと思いますが
そこをグッと堪えて、許される範囲でじっくり待ってあげましょう。
子供のリズムに合わせる
積み木の例ばかりで恐縮ですが
ゆっくりと2段重ねができたら
大人もゆっくりと2段重ねてみる
大人は深呼吸でもしながら、余裕をもって子供に合わせてみましょう。
やりとりを行う
子供⇨玩具の一方向でなく
子供⇔玩具⇔大人 のように
双方向の働きかけによってやりとりをしてみます。
会話や遊びを共有しコミュニケーションを楽しむ
言葉によるによるやりとり、言葉以外のやりとりはもとより
その場・その時間を子供と一緒に楽しむことが大切です。
言葉がけのテクニック(言語心理学的技法)
ここまで「姿勢」や「ルール」といった、ある意味ストレスの溜まりそうな話題ばかりでしたが
いよいよ実践的な、言葉をかける時の技法についてお話しをしていきたいと思います。
子供の行動をそのまま真似る(ミラリング)
子供が手を「パンパン」と2回叩いたら、大人も真似して「パンパン」と2回叩きます。
子供がゴロリンと転がったら、大人もゴロリンと転がってみせます。
共通点を見出すことで、
自分と同じだ 一緒に楽しんでいる 楽しい もっと何かしてみよう
と、関係性を作りながら子供の表現する意欲を高める効果があります。
言葉や音をそのまま真似る(モニタリング)
日本語として意味のある言葉でも
日本語として意味をまだ持たない音であっても
子供から発せられる音はそのまま、真似をします。
子供の気持ちや行動を言語化する(パラレル・トーク)
子供が車の玩具で遊んでいたら
「ブーブーだね」や
「ブーブー いけー」など
あくまで子供の動きや反応をを見た上でですが、
「こういうことを言葉にしたいんじゃないかな?」と
インリアル・アプローチの中でも少し「攻め」の匂いを感じるテクニックです。
大人の気持ちや行動を言語化する(セルフ・トーク)
子供ではなく、大人が車のおもちゃを動かしながら
「ブーブー」や
「ブーブーきたー」など
大人がやっていること・思っていることを言葉にするのがセルフ・トークです。
子供の言い誤りを正しく直して聞かせる(リフレクティング)
某有名な映画のワンシーンで
「おじゃまたくし!」
「とうもこ○し」
というセリフがありますが、そういう時に
「違う違う おたまじゃくしだよ。ほら、言ってみて。おたまじゃくし」はNG
「うん おたまじゃくしだね」とあくまで大人が自然と言いなおすということです。
2歳の我が子がチョコのことを「こちょ」と言いますが、
かわいいので私は敢えてリフレクティングしません。
子供に新しい言葉の表現を示してあげる(モデリング)
例として
子供がおやつを食べている時に
「もぐもぐ おいしー」と大人が声をかけてあげます。
無言のアクションが言葉で表現できるんだな、と暗に子供へ伝えていきます。
子供自身の自然な行いが「言葉の表現と結びつくんだ」と知る機会が増えると思います。
子供の言葉を意味的・文法的に広げる(エキスパンション)
子供が「わんわん」と言ったら
「うん。 大きな わんわんだね」であったり
「わんわん 犬だね」など
一語文を二語文に広げてみたり、敢えて情報量を増やしてあげる事があります。
これは意味のある(と解釈できる)言葉が出ている子供が対象であり、
次のステップに誘導してあげる意味合いの特に強い技法になります。
まとめ
基本的姿勢「SOUL」
- Silence(サイレンス:静かに見守る)
- Observation(オブザベーション:観察する)
- Understanding(アンダースタンディング:深く理解する)
- Lisetening(リスニング:耳を傾ける)
コミュニケーションの原則
- 大人が子供の発達レベルに合わせる
- 会話や遊びの主導権を子供に持たせる
- 子供が始めるまで待ち時間をとる
- 大人が子供のリズムに合わせる
- 会話や遊びを共有しコミュニケーションを楽しむ
言葉がけのテクニック(言語心理学的技法)
- ミラリング(子供の行動をそのまま真似る)
- モニタリング(言葉や音をそのまま真似る)
- パラレルトーク(子供の気持ちや行動を言語化する)
- セルフトーク(大人の気持ちや行動を言語化する)
- リフレクティング(子供のいい誤りを正しく直して聞かせる)
- モデリング(子供に新しい言葉の表現を示してあげる)
- エキスパンション(子供の言葉を意味的・文法的に広げてあげる)
冒頭にお伝えした通り、インリアル・アプローチは3つの大きな項目で成り立っています。
ただ、ここで声を大にして言いたいことは
支える側が無理をしないこと
これに尽きると思います。特にお母さんお父さん。
毎日の仕事や家事育児を乗り切るだけでも本っ当に大変なことです。
この上家でずっとインリアルなんちゃらを考えながら子供と関わろうと言うのは
スクワット100回頑張ったご褒美に、スクワット105回をプレゼントするようなもん
ではないかと思ったりもします。
「お?今アンダースタンディングの姿勢じゃない?」
「子供に対して実は自然にパラレルトークしてるかも!」
先ずはこれくらいから始められることを筆者はオススメします。
支援員として現場デビューされている方は
「今日は○君相手にモデリングを意識して反応をみよう」など
少しずつステップアップに役立てていただけると幸いです。
最後までご覧いただきありがとうございました。